私立桜恋学園~貴方は何科?~
でも、私は彼の腕から解放されていなかった。
「離してよ・・・お願いだから・・・」
目尻が熱くなってきた。
私の声は完全に震えていた。
体も僅かに震えていた。
「・・・優梨?」
私の異変に気づいたのか、彼は私を離す。
「泣いてるの?」
「・・・・・・・・・・・」
私は黙ったままだった。
何も言葉が出てこなかった。
彼は私をいきなり抱きしめてきたが、彼を責める気にもなれなかった。
授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。
本来の私なら急いで教室に向かうはずだが、今の私は1歩も動けなかった。
ただ、俯いて涙を流す事しか出来なかった。
「・・・ねえ、優梨。俺と一緒にサボろっか。」
「え・・・?」
思いがけない言葉に驚いて、僅かに顔を上げる。
彼はにっこりと笑って、私の腕を引いて歩き出す。
「ちょ、どこ行くの・・・?」
「屋上。中学の時は、俺の昼寝場所だった。」
(そんな情報、いらないよ・・・)
彼は私の腕を引いたまま、屋上に向かう階段を上る。
振り払う事は出来る。
でも、何故かそれが出来なかった。
私達はそのまま屋上に出た。