私立桜恋学園~貴方は何科?~


屋上に出るのは初めてだった。
中学の時は、屋上に入る事は禁止されていた。
空はすっきり晴れていて、とても気持ちがいい。

「昼寝には最適だよね~♪」

東城零は笑顔で言う。
そんな様子を見ていると、何だか自分が泣いているのが馬鹿らしくなってきた。

「あなたね・・・学校は昼寝する場所じゃないのよ。」

私は涙をハンカチで拭きながら、呟く。

「え~屋上で昼寝は最高だよ?オススメ出来るぐらい。」

「そんなもの、オススメしてもらわなくてもいいから。」

私はツンと顔を逸らす。

私は顔を逸らしたまま、黙り込む。
別に話題なんてないから。
私が黙ったのをきっかけに、彼も黙り込んだ。
しばらく沈黙が続いた。





「・・・あのさ。」

「え・・・?」

ふと、彼が私に声をかけた。
私はゆっくりと振り向く。

彼に笑顔はなかった。真面目な顔で私を見ている。

「な、何よ・・・どうしたの?」

「さっきは・・・ごめん。泣かせたみたいだし。」

「え・・・」

まさか謝られるとは思わなかった。
彼の事だから、何事もなかったかのように振る舞うものだと思っていた。


「俺さ・・・優梨の事誤解してた・・・」

「誤解・・・?」

私が尋ねると、「うん。」と彼は笑って答える。
でも、さっきの笑顔とは少し違った。

「優梨が、俺の事嫌がるのは、ただの照れ隠しだって思ってた。本当には嫌がってないって。でも、さっきので分かった。優梨が泣いたから。本当に、嫌だったんだって。理由は分からないけど、俺の事嫌いなんだって。」

「・・・・・・・・・」

どう返していいのか分からなかった。
私が彼を嫌がっていたのは、事実だ。
「そうだよ。」と、彼の言う事を認めればいい。

でも、そうする事をためらっている自分がいた。


(私は・・・彼の事、どう思ってるの?)




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