私立桜恋学園~貴方は何科?~


「桜恋学園の生徒になる皆さんには・・・
様々な【恋愛】を学んでもらいます。」

伊集院校長先生は開口一番にそう言った。
その言葉が終わると同時に、僅かに周りがざわめきだす。


「え?どういう事?」
「恋愛を学ぶって何・・・?」
「そんなの聞いてねえぞ・・・」

私も全く同じ思いだった。
彼女は、恋愛を学ぶと言った。
そんな言葉が出るとは想定外だった。
今まで恋愛なんて言う言葉とは無縁だった私にとって、恋愛を学ぶという彼女の言葉は理解し難いものだった。


「ふざけて言っている・・・と皆さんは思っているはずです。しかし、私は冗談やふざけなどで言っているのではありません。
桜恋学園は開校時から、生徒達に恋愛を教えてきたのです。恋愛とは、素晴らしいものです。恋愛は人を変えます。恋愛によって、人は悪魔にでも天使にでもなる事が出来ます。そこが恋愛の面白いところなのです。だから、私はそんな素晴らしい恋愛を皆さんに伝えたいと思っています。」


もはや、思考が追いつかなかった。

桜恋学園は進学校。有名な大学への進学実績がずば抜けていい私立の名門。
ここに来た人は、皆大学を目指して入ってきたのだ。
そんな学校の入学式で、校長先生から恋愛についての話を聞いている・・・

こんな入学式が一体どこにあるというのか。

周りの生徒もぽかんとした表情を浮かべている。
おそらく、私も同じような表情をしている事だろう。

そもそもこんな話をいきなりされて、保護者はどう思っているのだろうか。
生徒の後ろに座っている保護者、そして私のお母さんの様子が気になった。
しかし、皆が前を見ている中で私だけが後ろを向く勇気が出なかった。

そんな私などお構いなしというような様子で、伊集院校長先生の話は続く・・・
< 8 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop