私立桜恋学園~貴方は何科?~
どれくらい時間が経ったのか、分からなかった。
頭痛も治り、体全体を支配していた恐怖も消え去っていた。
私は東城零からわずかに体を離した。
恥ずかしくて、今すぐにここから消えたい気分だった。
子供みたいに、彼に甘えてしまったのだ。
彼も迷惑しているはずだ。
恐怖から解放されたばかりで、私には立ち上がる気力も残っていなかった。
彼の顔を見れず、俯いていると、私の頭に手が置かれた。
「もう落ち着いた?」
彼は私の顔を覗き込んで尋ねる。
「う、うん・・・あ、あの・・・」
「気にしなくていいよ。俺は大丈夫だから。」
私の言葉を遮って、彼は言う。
「・・・な、何で・・・?」
「え?何が?」
「普通、あんな事されたら嫌でしょ?理由も知らないでいきなり・・・何で、そんなに気をつかってくれるの?」
せっかく優しくしてくれている相手に、こんな事を聞くのは失礼だと分かっている。
でも、どうしても引っかかるのだ。
いつも、私をからかってばかりだった彼が、こんなに優しくしてくれる理由が分からない。
「・・・俺、基本的に女子には紳士だから!ってか、優梨がやっとデレてくれたから嬉しいんだけど。つんつんしてる優梨もいいけど、たまにはデレてもくれないとね。」
彼は笑顔で言い放った。
その笑顔は、いつもの笑顔だった。
私は、しばらく呆然となる。
(ああ・・・真面目に質問した自分が馬鹿だ・・・)
「デレてなんかないから!」
「えー?でもでも、優梨ってばさっき俺に抱きついー・・・って、痛っ!」
私は彼の頭を思い切り叩いた。
「あ、あれは・・・抱きついたんじゃない!その・・・す、少し、くっついただけよ!」
「・・・何が違うのかよく分からないんだけど。」
「と、とにかく違うから!変な勘違いしないでよね!」
(ったく・・・やっぱりこの人といたら調子狂う・・・授業までサボっちゃったし・・・授業サボるなんて初めて・・・)
授業をサボっただけではない。
大の苦手な男子と2人で屋上にいる事。
男子の前で、初めて混乱した姿を見せた事。
(何だか・・・一気に色々ありすぎて頭が混乱しそう・・・)
私は軽くため息をついた。