私立桜恋学園~貴方は何科?~
【優人side】
「あら、市川さんは?欠席?」
数学の先生である、神沢先生が出席をとりながら言った。
授業が始まったにも関わらず、市川さんの席は空席だった。
「いえ、トイレに行ってるだけです。」
市川さんと仲がいい藤堂さんが立ち上がって言う。
「そう、分かったわ。では・・・授業を始めます。教科書の35ページを開いてー・・・」
(市川さん・・・遅くないか?)
授業が始まって、約15分が経った。
しかし、市川さんは戻ってこない。
いくらなんでも遅すぎる。
神沢先生は市川さんの事は何も突っ込まず、授業を進めている。
(そういえば・・・この前、体調崩してたよな・・・)
まさか、また体調を崩したのか。
保健室にでもいるのだろうか?
何だか妙に胸がざわざわしていた。
何でこんなに彼女が気になるのだろうか。
(・・・探しに、いくか?)
ふと浮かんだその考えは、何だかとてもいい案に思われた。
「・・・先生」
俺は静かに立ち上がった。クラスメイトの視線がこちらに向けられる。
「どうしたの?佐久間くん。」
「えっと・・・」
(やばい・・・何も考えてなかった・・・何て言おう・・・)
「市川さんを探しに行きたいんです。彼女、この前体調崩してて。今、戻ってこないのもどこかで体調崩してるんじゃないかって。俺、保健委員なので・・・」
保健委員、というのは嘘だった。
苦し紛れの口実だった。
周りは静まり返っていた。
「保健委員じゃないだろ。」と突っ込む人もいなかった。
「そうね・・・分かったわ、佐久間くん。市川さんの事よろしく頼むわね。」
神沢先生はにっこり微笑んだ。
どうやらOKのようだ。
「ありがとうございます。」
先生に礼をして、教室から出ようとした。
すると、神沢先生が「あっ」と何かを思い出したように声をあげた。
「ちなみに佐久間くん。もし、市川さんが保健室にいるなら私の所に知らせに来るはずなの。そういう決まりだからね。知らせがないって事は・・・彼女、保健室にはいないみたいね。」