ねぇ、私と付き合って。
夏
私と薫が付き合い出したとき、学校中の噂になった、らしい。
確かにびっくりだろう。
クラスではほとんど喋らず笑わず、浮いた存在の私が、
学校の王子様の彼女になったのだから。
「村八分にされていた村娘が、いきなり将軍サマの妻になったくらいの衝撃だと思う。」
私がそう言うと薫はまたからからと笑った。
付き合うといっても、薫の態度がそれまでと変わることはなかった。
ただたまに――甘えてくるようになった。
でもその甘え方がちょっとカレカノのイメージと違う。
ハグ、みたいなものじゃない。
川で溺れそうになってる人が流木につかまるように、しがみつくように私に抱きつくのだ。
そんなとき大抵私は何も言えず、
震える薫の背中をトントンと叩くことしかできなかった。