王太子殿下の妃になりました
「何故私をここに連れて来たのですか?」
シオンはジュリアの手を持ち上げると、手の甲に口づけをする。
ジュリアはこれでもかという程に目を見開き、オドオドするしかなかった。
「ジュリア、貴方にとっては初対面に近い人間でも」
シオンは一度言葉を飲みすぅーと深呼吸をすると真剣な眼差しをジュリアに、向ける。けれど、何処か愛おしそうに微笑んだ。
「私にとっては2回も、貴方に助けてもらっているだ。一回目はお互いに小さい頃だから、おぼえていないだろうね」
「……え?」
ジュリアは2回もは今回のと、先日の事と思っていた。
まさか、自分が過去に会っているとは思いもしなかった。
「クス…何はともあれ、君が無事で良かった。あの時は少し動揺した」
「あの、シオン王太子殿下。その節は怪我の手当てありがとうございます。私に御用があって来たのでしょう」
ずっと不安でいるジュリアは自分が何かシオンが不快に思うことをしたのかと思い始め、胸のざわつきが収まらない。
「あぁ、そのことには気にしなくても良いよ。私が貴方に助けてもらったお礼なのだから……」
スッと音もなく立ち上がり、窓側に置いてある少し、コンパクトな机と椅子が置かれており、手紙やちょっとした書類整理に使う場所だろうとジュリアはそう考えた。
シオンは机の上に置いてある書類を手に取りジュリアの横に座ると、それをジュリアの目の前に置いた。