王太子殿下の妃になりました
「それは良かったわ。ジュリアさんシオンの花嫁になってくれてありがとう」
王妃はそう言うと国王を見ると微笑むと扇で口元を隠し、笑った。国王も王妃に頷く。
「そうだな、貴族たちの縁談を断って良かったと思っている。しかし、婚約者がいるという事にして断ったのはまずかったかのう」
ジュリアは驚き、ビクンとシオンの腕の中で跳ねた。
シオンの顔を見ながらパチクリと目をパチパチしたが、シオンの首に巻かれたうでの力を込めて胸にかおをうずめた。
その様子にシオンの両親は嬉しそうに眺め、見守っていた。そして、周りにいた騎士達も拍手を送っていた。
「シオンから聞いたかもしれぬが、私等はジュリア、貴女が王太子妃にさせることをシオンにも勧めていた。そもそも貴女ではなければ結婚しないと、私等に告げていたからな」
その言葉にハッとしたように預けていた胸から顔を起こし、国王王妃を見た。
すがる瞳をしながら二人を眺めた。
「何故、自分を勧めたかと、いう顔だな。ジュリアは覚えとらんかもしれんが、お主とシオンが会うのは初めてではない」
ジュリアは思い出そうと目を細め、昔の記憶を呼び覚まそうとしていたが、シオンに頭をポンポンと手をおき、撫ぜると華奢な体にキュッと力を込めた。
「昔はシオンは内気で人見知りが激しい少年でな、それを治そうと城下町の臣下の家ならば人と関わり大勢の人と出会えると思いしばらく預けたことがある」
国王の言葉に眉間にシワを寄せて聞いていたジュリアの眉間にシオンの指が置かれ、クリクリとほぐされた。
「シオンがある時、外で遊んでいる時、何者かに襲われ逃げていた時に助けてくれた少女がいた」
国王は何処か昔の出来事が楽しかったのか目が嬉しそうだ。
「少女は何も言わず逃げていたシオンを家に匿い、夜になった頃にシオンを家に送ってくれ、それからというもの少女はいつも一緒に遊んでくれたそうだ。それがジュリア貴女だ」
その話に驚きを隠せないジュリアに対し王妃は目に涙を溜めながら、今度は王妃が話し始めた。
「シオンが襲われたという一報を受けたわたくしたちは、すぐにシオンを王城に戻しましたが、帰って来たシオンは明るく社交的な子になっていました」
ジュリアはシオンの顔をマジマジと見つめ頭の中に該当者がいないかさがしはじめた。
「シオンの話にでてくるのは貴女のことばかりで、わたくしたちは、その時から貴女にしようと思ったの、シオンも初恋で貴女のことが忘れられずにいたものだからずっと縁談を断っていたのです」
ジュリアは思い出したように顔を上げ、
声を出した。
「あ、あの時ボロボロで家の木の下に隠れてた子」
ジュリアがそういうとシオン、国王、王妃は大きく頷く。