【短】初恋ラビリンス
花火の中で
***
時間が経つのは早いもので 既に夏祭り当日の夕方。
私は未だにベッドの上でのたうちまわっていた。
下から
「唯ー 早く着替えないと浴衣で行けなくなるわよー」
なんてお母さんの呑気な声が聞こえてくる。
あぁ、頭が痛い...
これから陽と二人っきりで祭りをまわるのだ。
緊張しない方がどうかしている。
ただまわるのではない。
特別な夏祭りというシチュエーション。
彼女を置いて なぜか私と。
うぅ...そんなことよりも早く起きなきゃ。
着替えなきゃ。
「お母さーん 今行くー」
「はーい」
私はやっとベッドから起き上がる。
部屋から出て トットット と階段を駆け下りて お母さんの待つリビングへ。
「さっ、可愛く変身しちゃいましょ」
なんて可愛らしく微笑んで お母さんが迎え入れてくれた。
「唯の初デートなんだしね♪」
って、余計な一言も忘れずに。
「別にそんなんじゃないから...」
陽には彼女もいるしね と、私は心の中でさらにつぶやく。
かなり虚しくなった。