【短】初恋ラビリンス
「あー...わりぃな 唯」
突然すまなそうな顔をして謝ってきた陽。
一体なんのことだろうか?
思い当たることがありすぎてどれかわからない。
久坂さんのことだろうか?
「カノジョが性格悪くてごめんなさい」って?
いや、陽に限ってそんなはずはない。
自分が選んだ相手を貶すようなマネ 陽がするはずないもの。
なら、この場面で謝ることは何?
頭をフル回転させ考える。
が、考え終わる前に陽が答えを言った。
「今日も一緒に帰れなくてスマン!」
あぁ、そんなコトか...
それならいつもと何も変わらないじゃない...
私は何を期待したのかしら?
陽を困らせないように笑顔の仮面をかぶる。
「大丈夫!ほら、陽はかわいい彼女さんと早く帰りなよ!」
「待てよ、だから美南海は彼女じゃ...「陽は照れないの!ほれ 行った行った!」
体育館のドアへ向かって陽の背中を押していく。
陽に顔を見せないように。
今 見せちゃったらさっき無理に笑った意味がなくなってしまう。
自分で「彼女」なんて口に出して、傷ついて、泣きそうになって...
なんて本当バカみたいで情けない。
久坂さんもちゃっかりと着いてきていて 胸が痛い。
陽の隣にふさわしいのは私じゃなくて 久坂さん...
そんなことを言われてるようで。
まぁ実際にそうでもあるんだけどね。
誰に聞いたって 陽にふさわしい彼女は平凡な私ではなくて 完璧な久坂さんだって答えるだろう。