【短】初恋ラビリンス
だからね、思いもしなかったんだ。
「なぁ、唯。
明日の土曜日、一緒に夏祭り行かないか?
もちろん二人っきりでさ」
渋々と久坂さんと帰ろうと歩き始めた陽が わざわざ足を止めて 振り返ってまで誘うなんて
本当に思いもしなかったんだ。
しかし当然ながら私も驚いたし、久坂さんも驚いていた。
そりゃそうだ。
彼氏が突然、彼女がいるにも関わらず他の女を夏祭りに誘ったから。
普通は驚く。ただそれだけのこと。
「どうする、唯」
めんどくさそうに頭を片手で掻きながら聞いてくる。
「わ、私は...」
分かってる。
普通は断る。
分かってはいるけど口は自然と動いて...
「行きたい」
そう呟いていた。