きみの幸せを願ってる
翌日。
俺のスマホにはラインが1通。
『病院行ってくるね』
きみからだった。
『気をつけて行ってこいよ』
授業は午後からだったから、大学に行く時間まで勉強をして過ごそうと思った。
だけど、開いた参考書の文章が何一つ頭に入ってこない。
気がつけば、きみのことを考えている自分がいた。
そして、スマホの画面を見て、きみからラインが入っていないことを確認して、ため息をついた。
「凛……」
俺ってこんなに心配性だったっけ?
きみに出逢うまで、人間に対して興味がなくて。
世界はいつもモノクロだった。
笑ったり、泣いたり、怒ったり、嫉妬したり。
クルクル表情が変わるきみ。
きみが隣にいるだけで、俺は毎日が楽しいんだ。
「そろそろ、行かなきゃ」
通学鞄に筆記用具と通学定期券があるのを確認して、机上のスマホを手にとった。
そのときだ。
俺のスマホが震えた。
ラインじゃない。
珍しく、きみから電話。
鼓動がドクンと嫌な音をたてた。
深呼吸をして、電話に出る。
「もしもし。凛?」
『輝!ねぇ、どうしよう!私……、脳に腫瘍が見つかちゃったっ!』
きみの声が鼓膜を震わせたとき、俺は家を飛び出していた。