きみの幸せを願ってる



きみに幸せを忘れてほしくないよ。
ずっと、きみの幸せを願ってる。


記憶を失ってほしくない。
俺のことも覚えていてほしい。


だけど、だけど。


俺は……


「俺は、凛を喪うなんて考えられない」


心の本音は、無意識のうちに言葉に変わった。


きみは俺の顔を見る。


「凛。手術受けて。生きて」


きみの顔が悲しそうに歪む。


「手術受けたら、輝のことも忘れてしまうかもしれないんだよ?思い出も約束もみんな思い出せなくなるんだよ!?」


「運良く記憶を失わないかもしれないだろ」


知ってるよ。
たとえ、今手術で助かったとしても、命はいつか尽きるもの。


いずれは喪われるもの。


だけどな。今はまだ早すぎるよ。


夢も叶えてない。
約束も果たせていない。


当たり前だったけど。
俺たちは生きていたんだ。


生きていたから、きみに逢えた。
生きていたから、きみを愛せた。


「命を失ったら、それこそ終わりだ。大丈夫。たとえ、記憶を失っても、夢はまた見つけ出せばいい。思い出はそこから築き上げればいい。約束は新しく作ればいい」


お願いです。
生きてください。


「凛。やっと掴んだ幸せは、絶対俺が手放させないから」


「輝……」


「言っただろ?誰よりも俺は、"きみの幸せを願ってる"」


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