きみの幸せを願ってる
廊下ですれ違ったら、きみは小さな手のひらを、俺に振ってくれる。
「工藤くん、おはよ」
女友達といるときでも構わずするから、きみは友達にいつも訊かれていた。
「凛って、工藤くんと仲良しだよね」
「うーん、まぁ、私が一方的に話しかけてるだけなんだけどね」
「あの人すごく無愛想じゃない?冷たすぎて、あたしはやだ」
「まぁ、確かに無愛想なのは否定できないけど、ほんとはすっごく優しいんだよ」
「えー、どこが?」
「私困ってたら無言で助けてくれるし、体調悪い時はすぐに気づいて、大丈夫か?って聞いてくれるし」
俺が通り過ぎたあとで、背中から、そんな声が聞こえてくるのも、ほんとはちょっと嬉しかった。
まぁ、俺がそれを顔に出すことはなかったけれど。