バーフライズ・ストンプ
出版社にセンセイの原稿を渡して、家へと足を向かわせていた。

どうしよう…。

まだ、胸のところが熱い…。

センセイにつけられた痕跡がそうさせているのかも知れない。

家には彼がいるって言うのに、わたしはどう言う顔をすればいいと言うのだろう…?

足を止めて、胸に手を当てた。

「――帰らなければいいんだ…」

小さく呟いた後、わたしは自嘲気味に笑った。

ロクに働かないで、ただ家に居座っているだけの男のところに帰らなければいい。

彼の顔を見るくらいなら、センセイのものになった方がよっぽどいい。

わたしは深呼吸をすると、きたばかりの道を逆戻りした。
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