バーフライズ・ストンプ
「ば、バイ…?」

「そう、“バイセクシュアル”。

人によっては“博愛主義者”なんて言う表現の仕方をする人もいる」

センセイの躰から漂っている花のような甘い香りに、頭がクラクラする…。

まるで、病気になったみたいだ。

「こんな私を、君は嫌いかい?」

センセイが言った。

そう言ったセンセイはどこか悲しそうで、放って置けなかった。

気がつけば、私は首を横に振っていた。

「――嫌いじゃ、ありません」

黒いビー玉のようなセンセイの瞳を覗き込むと、
「センセイが好きです」
と、言った。

「――紅葉…」

センセイは大切なものを扱うようにわたしの名前を呼ぶと、今度はセンセイの方から唇を重ねた。
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