最強甘々計画
最強甘々計画

計画その一 有名ケーキバイキングに行こう



 イチゴが欲しい。かつてこれほどまでイチゴを食べたいと思ったことが、私の中であっただろうか。


 旅行のプランなんて、ざっくばらんでいい。夏休みの宿題は、八月三十一日にまとめてやっていたタイプ。つまり私は、計画性のない人間。


 何故ついさっき、早々にイチゴだけを平らげてしまったのだろう。ショートケーキにイチゴが乗っている理由が分かった。甘味のあいだに挟む酸味。そのバランス加減が絶妙だ。


 最も私は、そのショートケーキのメインたる甘味の良さが、さっぱりと分からないのだけど……。


 私はイチゴが欲しいんじゃない。酸味が欲しいんだ。今飲んでるブラックコーヒー、つまり苦味だけで、まだ半分以上は残っているこの白くて柔らかい塊を、乗りきれる自信がない。


 食べ物を残すなんて、言語道断。しかし甘いものを苦手とする私には、この状況は辛い――。


「……ままれちゃん。俺のイチゴ、あげようか?」


 今日のケーキバイキングに誘ってくれた塩河(しゅうが)さんが、こっちを心配そうにして見ている。
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