最強甘々計画


 会社から賃貸マンションに戻った私は早速、部屋にあるティッシュカバーを付け替え、ペンケースも、塩河さんがくれたエクレアをモチーフにしたものに移しかえた。


 ベッドに寝転がり、半分チョコがかかったみたいな配色の、ドーナツのかたちをしたクッションを、胸に抱く。


 室内にあるスマホとティッシュカバーとペンケースを、それぞれ交互に見てみる。本物ではなくとも甘いものに囲まれて、何だかこの部屋の糖度が増した感じがする。


 塩河さんの視覚から入っていくという作戦は、妙案に思えた。好んで食べられない私から見てもデザートの見た目はどれも愛らしくて、目に入るだけで癒されるから。


 ――ままれちゃん。


 どこにいても何をしても塩河さんのことばかり考えているし、シロップの入った瓶みたいに浸っている。


 私の誕生日が過ぎれば、塩河さんとの今の関係と、私に対する優しさは終わってしまうのかな。


 いつか、全部溶けてしまうのかな。お菓子のように甘いこの魔法は……。
< 13 / 62 >

この作品をシェア

pagetop