最強甘々計画
その後の私は朝から集中力をフルに発揮して、自分の仕事を終わらせる。午後四時過ぎ、企画部の前に立つと、一度深呼吸をした。
「失礼します」
意気込んで中に立ち入る。企画部に訪れるのは、およそ二ヶ月前、企画部部長とイベントスケジュールを立てたぶりだ。
広々とした部内をきょろきょろと見回しても、塩河さんの姿は見当たらない。
今は会議室にでもいるのかな? 残念……。
「広報部の方ですか? ご案内いたします」
企画部の女性社員が、フリースペースまで私を誘導する。
「あっ……!」
既にそこで私のことを待っていた、新人の林祭理(はやしまつり)くんが、私の存在に気づくや否や立ち上がった。
「初めてお目にかかります! 私、企画部の林と申します!」
林くんは純真そうな、初々しい雰囲気の漂う青年だった。
そこから私は録音開始したICレコーダーをテーブルに、林くんが入社した動機や、今後の仕事での意気込みなどを伺い、時折雑談を交えながら、彼にインタビューをしていく。
「林くん、塩河副部長の席ってどこかな?」
インタビューを終えて、私は林くんに訊く。
「塩河副部長のデスクですか? えっとですね……」
林くんは新入社員らしい慌てた様子で、塩河さんのデスクまで向かう。
「こちらです!」
塩河さんのデスクの上は、几帳面な彼らしく、きちんと整頓されていた。私はノートパソコンの近くに、持ってきたキャラメルを数個置いた。
「塩河副部長と、お知り合いなんですか?」
「うん、ちょっとね。いつもお世話になってるから、キャラメルを置いておこうかなって。林くんにも、はい」
私はキャラメルを、林くんに渡す。
「ありがとうございます! 僕、キャラメル好きなんです!」
林くんはそれを、目を輝かせて受け取った。
素直でいい子そうだな。林くんのためにも、いい記事を書こうっと。