最強甘々計画


「えっ、そうだったんですか!? でも、どうしてですか? 私たち部門が違って、全く接点もなかったのに」


「今から半年くらい前のことだったかな。昼休み、ままれちゃんが七階にあるエレベーターの近くのベンチに腰掛けて、楽しそうな顔をしてうちのノートを使ってる姿を、たまたま見掛けたんだ。


 その時俺は、とても嬉しい気持ちになった。働いてるとさ、自分が誰かの役に立ってる実感って、なかなか湧かないものじゃん。例え同じ会社の社員でもこんな風に、俺らが企画した製品を楽しそうに使ってくれてる人がいるんだなって思えて」


 私は塩河さんから、思いもよらぬ話を訊かされる。飲み会で知り合う前から、塩河さんが私のことを意識してくれていたなんて。


 ――食べちゃいたいなあ。


 それじゃあ、飲み会でのあれも、私の存在を知ってた上での台詞だったんだ。


 ――ままれちゃんの誕生日は、俺が祝いたかったけどね。


 これで塩河さんに気のあるかのような発言をちょくちょくされていたことにも、合点がいく……。


「でもそれは、俺がままれちゃんに興味を持つことになった、ほんのきっかけに過ぎない。実際に接してみたら、ままれちゃんはやっぱりいいこで、健気で可愛くて……」


 塩河さんが真剣な眼差しを、こちらに向けてくる。


「こないだは、キスしてごめん。順番が違うよね。だけどあの時はもう、自分の気持ちを抑えきれなくて……」
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