最強甘々計画
「お父さんね、ままれんとこの会社のノートで、毎晩日記を書いてるのよ。もちろん書くボールペンも、ままれんとこのを使ってる」
母がコーヒーにスティックシュガーを入れながら話す。
「えー? あのお父さんが? 日記書くようなタイプじゃなかったじゃん」
「《ハクシ》の文房具が一番使いやすいって、絶賛してるわよ」
「ふふ」
不器用な父の微笑ましいエピソードに、私は声に出して笑う。
「ままれ、二十五歳の誕生日、おめでとう」
母からの祝いの言葉を皮切りに、母娘同時に、フォークで小さく切ったショートケーキを口に入れる。
母と一緒にケーキを食べることを待ち望んでいた。この瞬間のために、塩河さんの手を借りて、これまで色々と取り組んできた。しかし……。
「……」
私の期待とは反比例に、噛む回数は弾まない。
ケーキは甘い。そんなのは当たり前だ。
その甘いのが、自分の舌と楽しく絡み合ってくれない。二十五年培ってきた嗜好が、短期間で覆ることはなかった。