最強甘々計画


 自分を変えることができなかったショックに、目の前の母にも協力者である塩河さんにも、申し訳なさが溢れてくる。特に塩河さんには私のためにと、あんなに頑張ってもらってたのに――。


「……ままれ。今日はお母さんのこと喜ばせようと思って、このケーキバイキングに連れてきたんでしょう?」


 母が柔和な顔をして、フォークを皿に置いた。


「うん」


「お母さんがままれの分のケーキも食べるから、ままれはイチゴを食べる。それでいい? 分け合いっこしましょうよ」


「……うんっ」


 母の思いやりで、失いかけていた楽しいという感情が再び芽生えてくる。自分も母も楽しく過ごせていることが、この一時には必要不可欠なのに。


 ――ままれちゃん。俺のイチゴ、あげようか?


 どうして? 母も塩河さんも、言葉にせずとも、私の気持ちを分かってくれるの?


 私、二人に大切に思われてると思って、いいの? いいんだよね――?


「それじゃあ遠慮なく、もらっていくねー」


 母は満悦そうに、私の皿からショートケーキを跡形もなく取っていく。


 皿に残った小さなイチゴは酸味いっぱいで、美味しかった。


 塩河さんが言っていたじゃないか。私の母はきっと、違うものを食べても同じものを食べても、娘の誕生日を祝う楽しさは変わらないだろうって。


 私自身も、塩河さんのあの台詞には正しさを感じていた。しかしながら遠回りをしてこそ、気づけることもある。


 大事なのは、何を食べたかじゃない。


「んー、美味しい。今日は来て良かったね」


 そこに笑顔があることなんだよね。
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