最強甘々計画
飲み会での面識を期に、塩河さんとはお互いの連絡先を交換し、今日みたいに休日に二人で会うようにまでの間柄まで進展した。
塩河さんは二人きりでいる時まで「副部長」と呼ぶ必要はないと、私に命じた。その言葉に甘え、私は二人でいる時は彼を「さん」付けで呼んでいる。
私と塩河さんは高級ホテルの中にあるケーキバイキングの店を出た後、ホテルの地下駐車場に停めていた、塩河さんの車に乗り込んだ。
塩河さんがエンジンを掛けると、カーナビにテレビ番組が映る。
「すみません。せっかく今日のケーキバイキングを提案してくれたのに、ろくに食べられなくて」
私が結局ケーキバイキングの長い時間で食べたのは、ショートケーキ一個――と塩河さんがくれたイチゴ――だった。
「ううん、俺の方こそごめんね。甘いものを克服するのに初っぱなからケーキじゃ、例え巷じゃ有名なバイキングでもハードルが高かったよね」
塩河さんは私を優しくフォローするばかりか、自分を責める。
――塩河さん、甘いものを食べられるようになるには、どうしたらいいですか? 私、ケーキを食べられるようになりたいんです。
つい先日、私は塩河さんにこんな相談を持ちかけていた。塩河さんは子供っぽい私の相談事にも笑わず真面目に考えてくれ、協力してくれるとまで言ってくれた。
「俺もままれちゃんにはぜひ甘いものを好きになって欲しいし。自分の周りに、甘いものが好きな子がいた方が嬉しいから。野郎だけで甘いものを食べに行くというのも、行きにくいしね」
塩河さんが苦笑いを浮かべて言った。
塩河さんってモテそうなのに、さっきのケーキバイキングに一緒に行くような女性はいないの? なんて……。
「ままれちゃんは、どうして甘いものが食べられるようになりたいの?」
塩河さんが訊ねてくる。
「私も次の誕生日で二十五歳になるし、一世紀の四分の一を生きた訳で、新しいことに挑戦したいなって。今年の誕生日こそは、ケーキを食べて過ごしたいです」
誕生日にはケーキを食べる。おそらく多くの人たちが、子供時代にそんな経験をしたことだろう。そのような思い出が、自分には人生で一度もないのは寂しい。
「誕生日はいつ?」
「十一月二十二日です」
「来月か……後二ヶ月もないね」
「それから甘いものを克服したい理由は、もう一つあるんです」
私は言った。