最強甘々計画
結局私と塩河さんがオレンジママレードを味わうのは、翌朝となってからだった。
本日の朝食として、開封したばかりのオレンジママレードを、食パンの上にたっぷりと乗せて食べる。
「ママレードって不思議。見た目は甘そうなのに、苦味があるなんて」
私は幼少以来に口にする味に何ら抵抗なく、ママレード付き食パンをむしゃむしゃと頬張っていく。後に残る苦味が、癖となって美味しい。それに何より、奈津の思いやりの味がした。
およそ三年前、期待より不安の方が強い入社式で、知り合いのいない私に声を掛けてくれたのが、奈津だった。身長が一七○センチはある奈津は、同い年ながら、何かと姉御肌気質で私の世話を焼きたがる。
入社してから一年後、私が大学時代から付き合っていた彼氏に別れを告げしんみりとなっていた時は、奈津は「今度はもっと素敵な彼氏を作りな!」と私の背中を叩いて、励ましてくれた。そんな奈津のことだから、塩河さんとのことも、さぞ喜んでくれるだろうな。
「甘くて苦い。それがまた、ママレードの美味しさだよね」
塩河さんも満悦の表情で、私と同じものを食べている。塩河さんはお酒が飲めない以外は、特に苦手な食べ物はないそうだ。塩河さんの何でも美味しく食べるところもまた、私はとても好きでいる。
「ちょっと私、洗面室で身だしなみを整えてきます」
朝食を済ませた私は、洗面室の独立洗面所の前に立つ。鏡に顔を近づけて、肌をチェックする。塩河さんに愛された次の日は、不思議と肌の艶がいい気が……。
ふと、洗面室の隅に置いてある、デジタル体重計が目についた。
「……」
賃貸マンションの部屋にも体重計はあるけれど、ここしばらくは全然乗っていなかった。私はそのデジタル体重計の電源を入れ、なんとなしに乗ってみる。
「あっ――」