最強甘々計画


 こんなことなら奈津には、塩河さんとの交際が始まってすぐに、そのことを報告すれば良かった。そうすれば彼女も私に気を遣って、通りすがりの美人が塩河さんの元カノだと告げてこなかったはずである。


 だけどそれは単に、塩河さんの過去から逃げているとしか思えない。私のその態度は、かえって塩河さんに失礼なだけだ。


 塩河さんは次の二月で三十歳になるし、それに加えあんなにかっこよくて性格も優しいのだから、今まで彼女の一人や二人くらいはいないと不自然である。それくらいの年齢だと、恋愛経験がある方が健全だとも言える。


 私だってこれまで過去に、三人の男性と交際してきた。元カレを盲目的に好きでいた当時は、それぞれの元カレと二人で、公にはできない破廉恥なこともしてきた。


 仮に私のその過去で、今の塩河さんに妬かれても困る。だって私は、元カレたちのことはもう何とも思っていないから……。


 何とも思っていない、それは塩河さんも同じはずだ。私は塩河さんは私だけを見てくれていると信じている。


 しかしながら――どうしようもないことと頭では分かっていても、どうしてもショックを抑え切れない。だって塩河さんが、私と全くタイプの違う美人と、三年の歳月も交際していたなんて……。


 私は身長が一五九センチと、後一センチのところで一六○センチ台に届かなかった。短足で、スタイルもモデル体型とは程遠い。容姿もお世辞にも美人とは言えないのは、自分が一番よく分かっている。


 一目見た上での判断だけれど、今日の平さんは、バリバリ仕事のできそうな雰囲気に包まれていた。私は入社して三年目の今でも、時々仕事でミスをしてしまうかな……。


 三年か。長いな。私は塩河さんと付き合ってまだ、一ヶ月とちょっとしか経っていない。


 平さんは育児休暇をもらっていたらしいから、既に結婚して子供がいることは確定している。つまり平さんが今後、私と塩河さんの関係で脅威になることはほぼ間違いなくないだろう。


 塩河さんはどうして、三年付き合った平さんと別れたのかな。二人の過去に、何があったのだろう……。
< 49 / 62 >

この作品をシェア

pagetop