最強甘々計画


 塩河さんの昔の恋愛をことを知ってしまった二日後。私は夜に、塩河さんの自宅に上がっていた。弁当箱を取りに来ただけが、そのまま泊まっていくかたちとなる。


 弁当箱を洗い終わってからすぐに、入浴を済ませた塩河さんがリビングに現れた。


「今日のお弁当も、すごく美味しかったよ。ありがとうね。朝作るの、面倒じゃない?」


 塩河さんはバスタオルで濡れた髪を軽く拭きながら、キッチンの流し台に立っている私の元へと近づく。


「今朝測ったら、体重も元に戻ってた。こういうのを、幸せ太りって言うのかな?」


「――えっ」


 平さんのことがいつまでも頭の片隅にこびりついていて、塩河さんの言葉に対する反応が、つい鈍くなる。


「冗談を言ったつもりだったんだけど、面白くなかったかな?」


「すみません。ちょっとぼーっとしてて」


 塩河さんが私の前髪を上げ、額にキスをした。


「そろそろ寝ようか」


 そして私の手を引き、寝室まで向かう。


 塩河さんの寝室にあるダブルベッド。大人一人で寝ると広々としていて、大人二人で寝るとちょうどいい。


 このベッドがもしも、平さんとの日々のために買われたものだとしたら――。


 かつての平さんもこのベッドで、今の私と同じように愛されていたの?


 駄目だよ、私。そういうことを考えたら。ここは耐えなきゃ。我慢しなきゃ。


「……」


 負の感情を無理に抑え込もうとするほどに、私の両目から涙が溢れていた。
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