最強甘々計画
待ちに待った日曜日は、それからすぐに訪れてくれた。私は夕方に、塩河さんの誕生日パーティーとして、ビーフローストやピザ、サーモンマリネなどの料理を振る舞った。
「塩河さん、三十歳の誕生日おめでとうございます」
私は食事の前に、こっそりと用意していた誕生日プレゼントを、塩河さんに渡す。
「おっ、シャツにネクタイ? 嬉しいな」
「新しいのを買わなくても、塩河さんはいっぱい持ってると思うんですけど、塩河さんは白いシャツが似合うし、私はそれを見るのが好きだから」
「ありがとう。これ着たら、仕事もやる気が出そうだよ」
ささやかなやり取りの後に、私たちは食事に手をつける。
「俺もついに三十代か。新入社員の頃は自分が三十代になるなんて、思いもしなかったな」
塩河さんがピザを齧りながら話す。
「二十代の十年間なんてあっという間だったよ。あの頃は三十歳になるまでに自分は結婚してるんだろうななんて、遠い目で見てた」
「あ、それ分かります。私も二十代のうちに結婚したいなって気持ちが、どこかにありますもん」
「その願い、俺が叶えようか?」
塩河さんがふいに、私の目を見て言った。
「……えっ」
思いもよらなかった塩河さんからの返しにより、私の頭が真っ白になる。
「そのへんについてはまだ、考えてなかったかな? 気が早くてごめんね」
「いいえ、その逆です。すごく嬉しくて……」
「ままれちゃん、そう遠くないうちに俺と――結婚しようね。俺はままれちゃんと結婚したい」
私はそこで、生まれて初めてのプロポーズを受ける。
込み上げてくる言葉にならない思いで、静かに頷いた。熱くなった目頭を、指先で押さえる。
そして幸せいっぱいの夕食を済ませて、二時間は経った頃。私は今日のために立てていた計画の実行へと移す。
「塩河さん、こっちこっち」
塩河さんの腕を引っ張り、寝室まで連れていく。
「まだ寝る時間でもないのに、どうしたの?」
私ははやる気持ちで、レバータイプのドアノブを捻った。
「今日は塩河さんにもう一つ、バレンタインデーらしい贈り物があるんです。それは――」