最強甘々計画


 自分より体の大きな塩河さんを、私は後ろにあるベッドへと押し倒した。


「私です」


 そのままの勢いで、塩河さんの体に跨がる。


「えっ?」


「塩河さんは甘いものを食べるのをやめたし、バレンタインとしての贈り物が他に思い付かなくて。こんなこと言うの、アホみたいですかね――」


「そんなことないよ。俺にとって、一番嬉しい贈り物だよ。しょっちゅう食べてるけどね」


「だけど今夜は、いつもと違うんです」


 私は有無を言わせずに、塩河さんの着ている服を脱がしていく。今夜は私が、主導権を握るつもりである。


「好きです、鳴さん」


 塩河さんの体にキスをたくさんしながら、私は囁く。


「え?」


「いきなり下の名前で呼ぶの、おかしかったですか?」


「ううん、嬉しいよ。俺、今夜はままれちゃんに愛されたい気分だな――」


「そのつもりですよ」


 私は愛ある行為を続ける。自分が優位に立ったまま、大好きな塩河さんの体を味わっていく。


「ままれちゃん、もう俺、やばいよ……」


 塩河さんは私からの攻撃に、悶えている様子である。あまりのその愛くるしさに、私の本能は次のステージへと到達した。


 三十歳となったばかりの塩河さんを、私はひたすら食べ尽くした。こんな食べ方もあるのだと、塩河さんへの愛がまた一つ大きくなる。


「ままれちゃんはやっぱり、ママレードじゃないや。激甘だね」


 私に食べられた後の塩河さんが言った。


「そう言う塩河さんだって」


「あれ? もう『鳴』って、呼んでくれないんだ」


「まだ照れがあるので、名前を呼ぶのはアレをしてる時だけで……」


「それもいいね。興奮するよ」


「そんな直球で言われると、恥ずかしいです……」


 私は照れ隠しに、自分の顔を布団で覆った。


「近々、ままれちゃんの実家にいるご両親への挨拶に伺わせてね」


 塩河さんが布団の中で、手を繋いでくる。私たちにまた、新たな約束が生まれた。


 私にはやがて訪れるであろう塩河さんとの結婚生活が、はっきりと見えている。私たちの結婚生活もきっと、極上の甘々となるのだろうな。


「塩河さん」


 私は塩河さんの頬に、キスをした。


 うん、やっぱり塩河さんは甘い。
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