しあわせのかたち
「七海、ちょっと待てって。別にいいじゃん。たまには一緒にメシ食おうぜ」


後から出て来た阿部に腕を掴まれる。


もう、しつこいなぁ。

“たまには”って、だいたいいつも同期達と一緒に飲みに行ってるじゃん。


そう思いながら、阿部に背を向けたままでいると、


「別に、話したくないのなら無理には聞かない。だけど、話してラクになるのなら、そんな目をしている理由、聞くよ?」


あぁ……

やっぱり、バレてたか。


「それに、一人で居るより、誰かと居た方が、気が紛れるんじゃない?」


それは、そうなんだけど……


私は、少し迷ったけど、「……わかった」と返事をした。

一人で部屋に居るのも寂しいと思っていたから、阿部の優しさに甘えたんだ。

まぁ、一人で男の部屋に行くのはどうかと思ったけど。

阿部だし、まぁ、いっか。


「じゃぁ、決まり!行こう」


阿部は私の腕を掴んだまま、歩き出す。


「ち、ちょっと!腕、離してよ!!」


一応、人気のある阿部。

こんな所を誰かに見られて誤解をされたら、後が大変だ。


「えっ?あぁ、ごめん」


私は腕を離してもらい、阿部の後ろをついて行った。


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