しあわせのかたち
「さっきそこで阿部に会って、意味のわからない事を言われて、キレられてムカついただけ」


そして、ムッとしたまま須賀に答えている。


「阿部に何を言われたの?」

「ちょっとね……」


そんな二人の会話を聞きながら、俺はさっきまで七海が居た化粧室の方に視線を向ける。


あぁ……


少し離れているから確実ではないけど、きっと俺の事を睨んでいるのであろう男が一人立っていた。

きっと、彼が“阿部”って人なんだろう。

そして、俺を睨んでいるという事は……


「気のせいかもしれないけど、さっきから俺の事を見ているような男が居るんだよね」


彼が俺の方を見ている事を言うと、


「主任……。何か、すみません」


七海は申し訳なさそうに謝った。


「いや、大丈夫だよ。だって、七海さんは何で阿部君が俺の事を見ているのか、理由はわからないんだろ?だから、七海さんが謝る必要なんてないよ」


そう言って、俺は七海の頭を撫でる。

すると、その瞬間、彼の視線が鋭くなったような気がした。


あぁ、やっぱり。

きっと、彼は七海の事が好きなのだろう。


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