しあわせのかたち
「そんな事ないですよー。大丈夫です」


だけど、“碓井主任の隣で緊張して飲むペースが早くなった”なんて言えない私は、にこっと笑って平気なフリをする。

フリと言っても、飲むペースが早いとはいえ、私自身、そんなに酔っているとは思っていないけど。


「ならいいんだけどな……」


まだ心配そうな碓井主任だけど、私がケロッとしているから、それ以上は何も言わなかった。


「なぁ……。七海もさ、あんな感じのタイプが好きなのか?」


“あんな感じのタイプ?”


何が言いたいのかわからなかった私は碓井主任を見る。

すると、碓井主任は何故か拗ねたような表情をしていた。


って、何で碓井主任、拗ねてるの!?


私はその碓井主任の表情に驚く。

そして、何でそんな事を聞かれたのか、何でそんな表情をしているのか、わからない私はきょとんと碓井主任を見上げる。


「課長が望月を紹介した時、他の女性社員達と一緒に七海も望月を見て“可愛い”って言っていただろ?」


あぁ、うん。

課長が望月くんを紹介した時、望月くんの事を“可愛い”と思ったし、先輩達と一緒に“可愛い”って話していたな。

でも、何で、碓井主任が部下である私に対して、そんな事を聞くのだろう……?

……もしかして、私の事?


いやいや、ないない。

そんな事、あるわけない。

碓井主任みたいな人が、私みたいなどこにでも居るような普通の女の子を相手にするわけがない。


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