しあわせのかたち
裏通りまで来ると、阿部は立ち止り、腕を掴んだまま振り返る。

そして、そのまま私の腕を引っ張り、私を抱きしめた。


「お前が悪いんだろ……」


そう呟きながら……


……えっ?


「俺……。俺、ずっと、お前の事……」


阿部は私を抱きしめたまま、私の耳元で囁く。

「ずっとお前の事が好きだったんだ」と……


阿部にいきなり抱きしめられ、そして、阿部の言葉に、私は頭がついていかなかった。


「年末にさ。七海に彼氏が出来たって聞いた時はショックだった。でも、何も行動しなかったのは俺だし。だから、七海の事、諦めようとした。だけど、無理だった……。
だから、別れたって聞いた時は正直嬉しかった」


私を抱きしめる阿部の腕の力が強くなる。


「七海は俺の事、同期としてしか思ってないのはわかっていたし、俺も焦っていなかった。ゆっくりでもいいから、俺の事を……、男として見てくれるように、意識してもらえるように頑張るつもりだったのに……」


初めて聞く阿部の気持ちに私は驚いて動けなかった。

動けない私は、そのまま阿部に抱きしめられたまま阿部の話を聞いていた。


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