しあわせのかたち
「七海、ビールでいい?」

「はい」

「嫌いな食べ物とかある?」


私は首を横に振る。


「じゃぁ、適当に頼むな」


そう言うと、碓井主任は店員さんを呼び、


「生二つと――…」


いろいろ料理を注文してくれた。


どうしよう……

碓井主任と二人きりで、ドキドキしすぎて喋れない。


生ビールが運ばれてきたので、私達は乾杯をする。


「仕事終わりのビールはいいよな」

「はい」


笑顔で話し掛けてくれる碓井主任に対して、私は緊張で“はい”としか答えられなかった。

いつもみたいに、弥生や同期達とご飯を食べる時みたいに喋れない。

そんな私に気を使ってか、碓井主任はいろんな話をしてくれた。

……が、緊張し過ぎの私は、何を話したのか覚えていない。


運ばれてきた料理に手をつけ、お酒もすすんだ頃。


「なぁ、七海」

「はい」


碓井主任に視線を向けると、碓井主任は真剣な表情で私を見ていた。


< 75 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop