しあわせのかたち
「七海、今日は送るよ」

「えっ?」


碓井主任と一緒に居るというのに、阿部の事を考えていた私は、一瞬、碓井主任が何を言ったかわからなった。


「今日こそ、送らせて?」


顔を上げてきょとんとする私に、碓井主任はもう一度言った。


「えっと……、でも、今日は前みたいに酔ってないですよ?」


今日もお酒を飲んだとはいえ、碓井主任と二人きりでご飯を食べているという状況に緊張して、全く酔っていない。

それに、碓井主任に送ってもらえるのは嬉しいけど、緊張する。

だけど、碓井主任は真剣な表情で私を見ていた。


……主任?


首をかしげて、碓井主任を見上げていると、


「話が、あるんだけど……。もう少し時間いい?」


真剣な表情のまま、そう言った。

そんな碓井主任の表情に、私はさらにドキドキと緊張してきた。


「はい……」


小さな声で返事をし、私は頷く。

そして、私達は近くの公園に入った。


「そこ……、座ろうか」


碓井主任が指さす先にベンチがあり、私は碓井主任と少し距離をあけて座る。

ベンチに座った私達の間に、しばらく沈黙が流れた。


話って、何だろう。

主任、まっすぐ前を見たまま、何も話さないし……

何か話し掛けた方がいいのかな……?


私は緊張し過ぎて、喉がカラカラに乾いてきた。


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