しあわせのかたち
「七海、今日、デートじゃなかったっけ?」


っていうか、何で、今、そこに触れるかなぁ。


阿部は私の隣に並んでお弁当を選びながら、聞かれたくない事を聞いてくる。


「うるさいなぁ。そういうアンタは祝日なのにスーツ着ているけど、仕事?」


ムッとしながら返すと


「クリスマスイブに休日出勤させるとか、ありえなくねぇ?」


言葉では“嫌”と取れる言い方をしているけど、別にそんなに嫌そうな感じもない。


「まぁ、予定はなかったけど」

「あっそう。それはご苦労様。じゃぁね」


私はお弁当とビールを持ってレジへ向かう。


「ちょっ……、待てよ。せっかく会ったのに冷たくない?クリスマスに一人でコンビニ弁当って寂しいから、俺ん家で一緒に食って飲もうぜ。どうせ、家近いんだしさ」


阿部はさっさと帰ろうとする私を、慌てて引き止める。

私の住むマンションと阿部の住むマンションは、歩いて10分くらいの距離。

近いのだけど……


「結構です!私、帰る」


今の私の顔を見られたら、何を言われるかわからない。

そんなのは嫌だ。


私はレジでお会計を済ませると、阿部を置いてコンビニを出る。


< 9 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop