しあわせのかたち
それから、また数日が過ぎ――…


月末に近付くにつれ、残業の日々が続く。

だからってのもあり、碓井主任と仕事以外で話す機会がなかった。

いや、私は無意識に、残業を理由に避けていたのかもしれない。





月も変わり、通常業務に戻る。

とはいえ、今月はお盆休みがあるから、いつもよりかはやる事が多いけど。


「碧ー。まだ主任に返事してないでしょ」


今は昼休み。

今日は弥生と外でお昼ご飯を食べている。


「うん。告白するのも勇気いるけど、返事をするのも勇気がいるね……」

「って事は、イエスかノーかは決めたんだ」

「うん。フラれるのは辛いけど、断るのも辛い」


弥生は「そっか……」と呟き、真剣な表情で私を見る。


「まぁ、断るのも辛いよね。でもさ、碧も辛いかもしれないけど、告白をして待っている方もすごく不安だと思うよ。そりゃ、大人だから顔には出さないだろうけど」


そうだよね。

“返事は急がない”と言われていたけど、いくらなんでも待たせ過ぎている。

碓井主任に告白をされたのは五月の下旬だから、二ヶ月ちょっと待たせている事になる。


「うん。ちゃんと返事する」

「早く返事をした方がいいって言っているのは私だけど……。碧、本当は、今も迷っているでしょ?私が余計な事を言ったから?ごめんね」


弥生は申し訳なさそうに言う。


「ううん。そんな事ないよ。それに、答えはもう決まっているから」


弥生に安心させるように、私は笑顔を見せる。


「ならいいんだけど……。碧がどんな答えをだしても、私はそれを応援するよ」

「ありがとう」


お昼ご飯を食べ終え、会社に戻る前に、碓井主任にメールを送った。


“今夜、お時間よろしいでしょうか?”と……


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