ボクサーな彼女
第4章 挫折と苦悩
春ー

陸が中学の卒業式を迎えた。

彩は陸を迎えに中学校まで行った。

「陸、迎えに来たよ~。卒業おめでと。また一緒に頑張ろうね~。はい、強制連行」と彩は言って陸の手をしっかり握って、JKまで引っ張って行った。

JKにつくとみんなが歓迎してくれた。

けどやっぱり過酷だった。

1年はものの数週間でキツすぎると辞めていく…

そんな中で陸は、彩と一緒にしたいと強く思い、どんなに過酷でも負けずに耐えて頑張っていた。

ボスは卒業し、理亜がキャプテンになった。

そして、2年になった彩は副キャプテンとなった。

陸も正式部員になり、さあ頑張ろうと意気込んだ矢先、彩は下校途中に事故にあった。

子猫が道に飛び出し、助けようとした男の子が車にひかれそうになっているのを体を張って守った。

それが理由で彩は足をひかれた。

激痛…。

幸い意識ははっきりあったため、ひいてしまった男性が自分の車に乗るように指示し、

子猫抱いたままの男の子を後ろに乗せると、

彩を抱き上げ、助手席に座らせ、病院へと搬送してくれた。

男の子は無傷ですぐに帰され、子猫も無事で、動物病院に移された。

彩は病院で、医者に怒られた。

「またか!キミは…次はほんとにもうムリだよ?今回はあんまりひどくなさそうだけど。とは言ってもボルト少しずれてる…まぁ手術決定。家族に連絡するから待ってな」といわれて医者は連絡しに去っていった。

車を運転していた男性はどうしていいのかわからず、挙動不審になっていた。

「ありがとうございました。おかげさまで傷も浅そうなので気にせずに…帰ってくださって大丈夫ですよ。ご心配とご迷惑おかけしました」と彩が、丁寧に頭を下げると、男性は「ほんとにすいませんでした」と頭を下げて、

「あの…手術代くらい払わせてもらいたいので、連絡先教えますので、連絡してくださいね」と付け足して名刺を差し出して帰っていった。

病院に駆けつけた彩の家族は「また事故ったの?二度あることは三度あるって言うし…もう一度あるんじゃない?」とか言われ、彩は苦笑した。

彩、二度目の入院。

また病室で泣きわめく。

理亜、ボスは見舞いに来てくれた。

二人の前では笑顔作ってる彩に、「ムリして笑わなくていいよ」と理亜は言って、

「そうだぞ。ムリに笑わなくていい。泣いていいって言っただろう?強がるな」と優しくボスに言われて、我慢していた涙がこらえきれずに溢れてきた。ボスは優しく、頭を撫でた。

「次の試合出れないな~」と理亜は笑いながら言うが、

「おい、それは言ってやんな」とボスは言うが、

彩はさらに泣いてしまった。

二人は彩を慰め泣き止むまでずっとそばにいてくれた。

そして、泣き止んだのを見て二人は帰っていった。

彩は悩んだ。

苦しくて、辛くて、悔しくて。

もうダメかもしれないと。

全然勝てなくて…体は悪くなっていく…。

今の自分ではこのまま続けられる自信なんてない。

そう思ってもがき苦しんでいた。

まだ涙が溢れてきた。

そこに、陸が、「彩さん」と言って入ってきた。

泣いてる彩を見て、「大丈夫ですか?どしたの?」と言った。

「あのね…なんか、辛くなっちゃって…次の大会は出られないでしょ?それに…今の私にはブランクを乗り越えて…とか出来ないような気がして…。相手はみんな強くて、正直、戦意喪失してて…もう辞めようかなって…」と彩は言った。

陸はただ抱き締めることしか出来なかった。

しばらくして、「まだダメです。俺はボクシングしてる彩さんが大好きだからまだ諦めないで頑張ってほしい。次出れなくてもその次まだあるじゃない?俺も一緒に頑張るから頑張って下さい。お願いします」と陸は言った。

彩は陸の腕の中でボロボロ涙を流しながら、「わかった」と言った。

数週間後ー

退院した彩は練習を再開した。

まだ体は上手く動かない。

それでも必死に練習した。

久しぶりの練習は厳しくてキツかった。

けど、彩は一切弱音を吐かずに頑張り続けた。

周りは頑張る彩につられて頑張るが、「本調子じゃないだろう?ムリしなくていいぞ」と理亜が彩に声かけると、

「はい。けど、出来るだけムリしたいんです。極限まで頑張りたい!!私、ほんとは辞めようかと思ってました。けど、陸に励まされて、もう1度だけ頑張ってみようと思ったんです。なので頑張らせて下さい。どんなに苦しくても、食らいついていってみせます!!」という強い彩のことばに

「仕方ないな~まぁお前はそうゆうやつだからな。わかった。やれるとこまでやってみろ。俺はお前を信じてるから、頼むぞ、副キャプテン」と理亜に言われて、「わかりました」と彩は言った。

「彩さん、ひとつお願いが…」と陸が言う。

「何?」と彩が聞くと、

「俺が次の冬の大会で、成績残せたらご褒美下さい」と照れたように言った。

「いいよ。何がいい?」と彩が聞くと、

「あのね…ちゅーがいい!!ダメ?」と彩の耳元で、小さい声で陸は言った。

彩は少し考えてから、顔を赤くして、

「いいよ。条件は、次の大会で地区予選で三回戦突破ね!!」と言った。

「やったあ!!けど…何で三回戦なの?成績残せるってほどの位置ではないよね?」と陸が言うと、

彩はにっこり微笑んで、「私を越えてほしいから。私は初めての大会で、三回戦で敗退した。すっごく悔しかったんだ。だから、陸には私を越えてほしいんだ。頑張ってね?この大会には私は参加出来ないけど」と言った。

「うん。そっかぁ~。わかった!!俺、頑張りますね!彩さんにもう一回惚れてもらえるように…」と陸が笑うのを見て、

「いちゃついてんじゃねーぞ。いちゃついてる暇あるならさっさと練習しろ!!」と理亜に言われて、彩と陸は練習に戻った。

そして、夏の大会の迎えるー

理亜や先輩たちはきっちり成績を残した。

彩は残念ながら試合に参加出来なかったため、みんなの応援をしていた。

陸の試合が始まった。

一回戦でこてんぱんにされた陸、それでも必死に食らいついていき、何とか判定勝ちで、ぎりぎり二回戦にコマを進めた。

「おめでと~。良く頑張ったね~。これから相手はもっと強くなるから気を引き締めてね!!」と彩はエールを送った。

大きく頷いた陸は、リングに向かった。

熱くなる会場、ヤジやらエールが飛ぶなか、

陸の二回戦は始まった。

わずか数秒、陸はKOされ沈んだ。

リングから降りてきた陸は大声を上げて泣き出した。

彩は抱き締めて、「良く頑張ったね!!初めてで一回戦突破しただけでも凄いよ」と言って優しく頭を撫でた。

しばらくして陸から離れた彩は陸の唇に小さくて、優しいキスをした。

すぐに離れるだけの短いキス…

陸は泣き止んだと同時に硬直していた。

そんな陸を見て彩はクスッと笑い、「約束は違ったけど…陸は諦めないで頑張ったから…ご褒美ね?」と言った。

「おい、マジかよ!?あれアリ?ズリィ~紀子、俺らもキスしようぜ!!」と理亜は言って紀子を呼び寄せ、唇を重ねた。

角度を変えたりしながらディープなっていくキスを見て、彩は思わず陸の目隠しをした。

そして、「理亜さん、場所考えて下さい」と言った。

「わりぃ」と理亜は言って、二人はキスをやめた。

「帰ろう」と彩が言ってみんなは帰路についた。

学校に戻ると理亜が、

「陸、お疲れ様。良く頑張ってた。けど…やっぱりまだまだだった。これからもっとしごいてやるから覚悟しとけよ!!後、あれは何?彩とキスしただろ!!」と何故か怒ってる。

「まぁまぁ、そう怒らずに…良いじゃない!!陸君だって高校生になったんだし…キスくらい解禁してやりな。それとも、彩ちゃんに自分が出来なかったからって怒ってるの?」と紀子が言うと、

「ばっ、ちげぇーよ」と顔を真っ赤にして言う理亜に対して、

「分かりやすいなあ~。隠さなくていいよ。彩ちゃんのこと大好きなのは知ってるし…ってまあ、私も乗り気でしちゃったし!!いいよ。理亜キスうまかったから許してあげる」と紀子は言った。
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