ボクサーな彼女
中に戻った彩と陸に、

「おっ、戻ってきたな。ちゃんと仲直りしたんだな」と理亜は声をかけた。

「ねぇ陸、理亜さんて、ほんとに鬼だよね~。練習厳しすぎない?」と彩が言うと、

「そうだよね~。家でも厳しいの!!けど…兄貴のおかけで俺今あるんだなって思うと、兄貴って偉大だなって思うよ」と陸は言った。

「お前に言われたくねぇよ、彩…俺はお前には甘いからそんなに厳しくしてるつもり無いけど…お前が化け物級に練習してんだろう?違うか?」と理亜は言った。

「けど…まだ足りない。極限まで自分を追い込まないと、私はまた負ける…」と彩は言って一人、別メニューで調整を始めた。

周りも練習を再開した。

冬ー

覚醒された彩の本能がついに牙を剥く。

大会が始まると、誰も手がつけられないほどの実力を発揮した。

そして、ついに、彩は個人戦で初の総合優勝を成し遂げた。

と共に、団体戦では彩と理亜の活躍があり、連覇を成し遂げた。

彩は泣きながら喜んだ。

「彩さん、おめでとうございます!!やりましたね!!ついに。彩さんの努力が報われて俺も嬉しいです。俺、もっと頑張りますね!!彩さんについていけるように!!」と言って抱きついた陸、そんな陸を受け止めながら彩は笑って大きく頷いた。

「彩、おめでとう」と一言理亜は声をかけた。ここから彩の第2の伝説は始まるー。

「1回優勝したくらいで喜んでられませんよ!!
まだまだ大会はたくさんあるんですから…
今度は防衛して、チャンピョン死守して見せますんで、
理亜さん、これからも鬼のようなご指導よろしくお願いします」と彩は頭を下げた。

「こちらこそ、よろしく」と理亜は返事した。

「くそーまた負けたな~。けど…やっぱりすごいよね。今度は負けないから」と草津は吐き捨てるように言うと、去って言った。

客席から、ボスが彩の元に来てくれた。

そして、「さすが俺が見込んだだけあるな!!やっとお前の本気見れたような気がするよ。おめでとう」と言った。

「ありがとうございます。ボスに出逢ってなかったら私は、普通の女の子やってましたね。多分…けど…私はボスや理亜さんに出会い、ボクシングに出会い、陸と出逢って、ほんとに幸せです」と彩は言ってはにかんだ。

それからも彩は辞めることなく、練習を始めた。

数日後ー彩は海の近くを走っていた。

堤防に座る一人の男子…。

見覚えのある人物に彩はそっと近づいた。

そして、「草津さん?」と声をかけた。

草津は振り向いた。

「こんな寒いじきにこんな場所で何してるんですか?」と彩は言って草津の横に座った。
「あーいやぁー少し考え事をしてて…俺さ、部活もうすぐ引退じゃん?だからこれを期にボクシング辞めようかな~って」と草津が言うと、

「何でですか?何かあったんですね…私はやめて欲しくないです。私にとって草津さんは憧れのボクサーであり、永遠のライバルなんです。だからせめて、私が引退するまでは私のライバルとして共に戦って下さい!お願いします」と彩は言った。

「こないだ、大会前、俺は他校のやつにボコられた。車にも引かれそうになった。
まぁ健が俺を助けてくれたから幸い、大会には出られたんだけど…
俺は勝てなかった。優勝どころか、初戦で体はキツくて…その後は放棄だよ。
辛くてね…今まで俺はその…そんな酷いこととかされたことなくて…メンタル弱いから…」という草津に

「そうでしたか。なら私のために、ライバルでいてくれませんか?私はまだ諦められません。1回優勝したくらいでは。もっと頑張って強くなる。そして、優秀な後輩を育てたい!!私は絶対王者に君臨して見せます!!なので、応援してください!!」と彩が言うと、

「わかったよ。君にそこまで言われたらね~。うん、気持ち決まった。ラストの引退試合必ず決めて、プロになるよ。ありがとう」と草津は言って、

「走ってたのに、とめてごめんね。ありがとう」とつけたし、去って行った。

彩は走るのを再開した。

が、草津の言葉が頭から離れない。自分ももしかしたら、潰されるのではないかと想像して身震いした。
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