ボクサーな彼女
栄介に向かって勢いよく、車が突っ込んできた。

とっさに彩は栄介をかばい、ぶつからないところに突き飛ばした。

その勢いで栄介はしりもちをついたものの、幸い大事に至らずに済んだが、その代わり、勢いよく車にはね飛ばされてしまった彩。

彩は体を張って栄介を守った。

車はものすごいスピードで、去って行った。

はね飛ばされて、頭を強く打ち付けて意識を失っている彩。

どうしていいかわからず、おどおどする栄介。

栄介は大きな声で「救急車ー」と叫んでいた。

その声がジムまで響いたのか、草津や、ボス、オーナーがすぐに駆けつけてくれて、救急車も呼んでくれた。

そして、ボスが人工呼吸などを必死に行ってくれた。

その間に、草津が、理亜に連絡し、そこから、紀子、陸、彩の家族に連絡がいった。

救急車が到着して、彩はたんかで、救急車に乗せられた。

栄介も一応、検査を受けることになり、一緒に乗せられた。

そして、ボスが「俺が同乗します」と言って、救急車に乗り込み、彩と栄介は救急車で、病院まで緊急搬送された。

緊急オペが始まり、皆が病院に駆けつけた。

栄介の診断結果は浅い打撲で済み、次の試合にも問題ないとのことだった。

栄介は泣きながら俺のせいでと自分を責めた。

そんな栄介を抱き締めながら、「大丈夫!!大丈夫!!彩さんは絶対大丈夫だから、自分ばっかり責めないで。俺の方こそ泣きたくなるし、辛くなるよ。お前が責めるなら、二人でデートさせた俺にも責任があることになるから!!信じよう」と優しく、言い聞かせるように言った陸。

陸の目にも涙が溢れていた。

栄介はみんなに説明をした。

それを聞いた、草津、ボス、理亜が、「栄介、ちょっとおいで。話そう」と声をかけた。

そして、「悪いが、紀子、栄介と話してくるから陸を頼む」と言って、去って行った。

しばらく離れたところで栄介は草津が同じことをされた話を聞かされた。

そのときは健に救われ、二人とも無傷だったこと、その話を彩にしていたこと、彩が陸に言えず、理亜に相談していたことを細かく、説明した。

そして、「アイツは全力で阻止すると言ってた。多分狙われるのはお前だろうって。けど、俺は、アイツに怖れずに自分の信念に従い行動しろと言った。だからアイツはそれを実行したまでた。お前が落ち込むことはない。お前に責任は無いんだよ。悪くない」と理亜は言ったのだった。

更に泣き崩れる栄介を抱き締めながら支える理亜、それを見守ってる、草津とボス。しばらくして、栄介は落ち着いた。

みんなのもとに戻ると、治療を終えた医者が出てきた。

「最善は尽くしました。後は本人の意思です!!時間はかかると思いますが、目を覚ますのを待ちましょう。頭を強く打ち付け、勢いよくはね飛ばされたみたいですね。」と医者は言って、彩を個室に運んだ。
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