ボクサーな彼女

数日後ー

彩はプロとして初めてのデビュー戦を迎えた。

多くのファンが集まる中試合は始まった。

相手は体格のいい女性だった。

彩は必死で食らいついて行くが上手く交わされてしまった。

そして、相手は攻撃を始めた。

パンチは重く、ヒットすれば1発で沈んでしまうようなパンチだった。

彩は避けることができず、体は上手く動かない。

スピードについていけず、押されてしまった。

呼吸は段々荒くなり、立っているのも辛い状態、それでも必死に相手に向かって行った。

が、一歩及ばなかった。

相手の左フックをまともに食らってしまった彩はそのまま、沈んだ。

プロデビュー戦は黒星スタートになってしまった。

彩は終わっても自分で立ち上がることができず、相手の女性が立ち上がらせて、リングを下ろしてくれた。

そこにみんなが寄って来て、たくさん声をかけてくれた。

その言葉に涙が溢れ出た。

彩はその場に崩れそうになった。

それを支えてくれたのは紛れもなく陸だった。

「負けた…」と一言呟いた彩に

「お疲れ様です。よく、頑張りましたね」と優しく声をかけた陸はそれ以外の言葉は言わず優しく彩の頭をポンポンした。

「負けたか…」とボスが辛そうに呟けば、

オーナーが来て、

「いやーさすが彩ちゃんやね～。あの人相手によくここまで戦えたよ。立派、立派。まぁ、デビュー戦なんだし、そう気張らずに次また頑張ろうよ～」と言った。

彩はオーナーのそんな優しさに救われた気がした。

ほとんど負けたことの無かった彩が、こてんぱんにやられた。

甘くない現実に、ボスや草津、理亜は誰も言葉が出なかった。

そして、栄介は初めて見る無惨な彩にショックを受け、硬直してしまった。

紀子は、「おーい、栄介君大丈夫？」と声をかけた。

栄介はしばらくして、「えっと…あっ、はい」と言った。

「栄介、ごめんね。勝てなかった。まだまだ力不足だった」と彩は陸に支えられたまま言った。

「彩さん、無理せずに今日はもうゆっくり休みましょう？」と陸に言われ、小さく頷いた彩。

そして彩は息を整えて、陸に送ってもらいながら家に帰った。