ボクサーな彼女
「甘党なんだ。意外かも。彩さんは俺がスポーツ苦手だって?」と陸が言うと、

「はい。そう言ってました。どんなデートするんですか?って言ったら定番でしたから…けど…ボウリングはよく行くし上手いって!ボウリング行きませんか?」と栄介は言った。

「ボウリング?いいよ。勝負する?俺、負けないよ。ボクシングでは負けたけど、ボウリングでは負けない」と陸は言った。

そして二人はボウリング場に向かった。

「なんか男二人でボウリングってなんかねぇー?彩さんと来たかった」と陸が言うと、

「俺は陸さんと二人で来たかったので!!」と栄介は言った。

「ボウリングに?ほとんどいつも一緒にいるでしょ?俺ら。まぁ、映画とか言われるよりはマシか」と陸は言って準備を始めた。

二人はボウリングを始めると、無言で黙々と投げ続けた。

運動神経のいい栄介は最初は中々上手くいかなかったものの、わずか3投目からコツをつかみはじめたのか、ストライクを連発し始めた。

「流石、運動神経いい人は違うね~」と陸は言って集中した。

1ゲーム終えて、陸と栄介のスコアは大差で陸の勝利だった。

「まだやる?」と陸が言えば、

「もう、良いです」と栄介は負けを認め、さっさと片付けを始めた。

「あ~あ、いつももっといくのになあ~」と陸は言って片付けをした。

「次何したい?飯でも行く?」と陸が言って歩き出すと、

「飯ですか…行きましょう!!」と栄介も言って歩き出した。

「俺らってさあ、はたから見たらどう見えるんだろうね?ダチとかに見えてんのかな?」と陸が言うと、

「まぁ…そうですよね。同じ部活の先輩、後輩って感じには見えませんよね。ましてボクシング部なんて絶対に思われてませんよね!!多分…」と栄介が言った。

「だね。俺先輩ぽくないし…。どっちかって言ったら、栄介の方が先輩に見えるもんね~」と陸は笑った。

「確かに…。何食いますか?」と栄介が聞くと、

「何でもいいよ。俺、優柔不断だから決められないし…何でもいい。栄介の好きなもの食べよ」と陸は言った。

栄介は必死で考えた。

「…パスタとかでも良いですか?」と栄介が言うと、

「いいよ。パスタかぁ~。栄介は肉!!とか言うと思った」と陸が言うと、

「俺、肉のイメージありますか?」と栄介、

「わかんないけど…何となく、ガタイとかもまあまあ良いし…その筋肉のつき方はバランスとれた食事してるからなのかな~って。俺は好き嫌い激しいし、偏食、不規則で食べたり、食べなかったりするからな~」と陸は言った。

栄介は言葉が出てこなかった。

そんなんでよくボクシングなんてやってられるなと思った。

口にはしなかったが。

それを察したのか、「なんか言いたそうだけど?」と陸が聞けば、「いえ、何もありません」と栄介は笑ってごまかした。

そして、二人はパスタを食べるため、パスタ専門店に入った。

「う~ん。いい匂い♪美味しそう」と陸は言った。

二人はテーブル席に向かい合って座った。

二人ともメニューは中々決まらなかった。

「彩さんならサクッと決めてるのに…俺ら時間かかりますね」と栄介が言うと、

「そうだね~何食べよう?決まった?」とあんまり人の話を聞いていないような返事をする陸に、

「一応決まりました」と栄介は言った。

「俺、栄介の一口もらうとして…これにする」と陸は言い出した。

栄介は、「えっ?俺の取る気ですか?」と本音が出てしまったが、

「うん、俺のもあげるから」と陸は言って店員を呼んだ。

そして二人は注文した。

しばらくして注文したものが来て、二人はそれぞれ頬張った。二人はお互いにあげることはなく、普通にペロリと平らげてしまった。
「あー栄介のもらうの忘れた!!」と陸は言い出した。

「俺、あげるって言ってないっすもん。だから取られる前に食べちゃいました。めっちゃ旨かったですよ」と栄介は嫌味っぽく笑った。

「いいもん、俺のも旨かったから」と陸は言って子供みたいにほっぺを膨らませた。

「そろそろ行きましょう!!こんどは何しますか?」と栄介が言えば、

「そうだね~。飯食ったし、運動でしょ?ってな訳で、ジム行こ」と陸は言うと、

早々と席を立ち、お会計をして、店を出た。

栄介も続いて店を出た。

「あの、割り勘…俺、自分の分くらい払います!!」と栄介が言うと、

「えーそんなの気にしない♪まぁ気持ちよく出してあげたんだから、先輩の好意受け取っときなよ」と陸は言って歩き始めた。

栄介はこんなときだけ先輩使うな!!と心のなかで思った。


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