ボクサーな彼女
「心の声漏れてるよ」とシンプルな返事をする陸、

「なんか、すいません。思わず…口調とか…」とキョドりながら謝る栄介に、

「俺、そんなこと気にしないよ?いつももっとそんな感じだったら嬉しかったな。けど、俺、もうすぐ卒業じゃん?寂しいな~。栄介にあんまり会えなくなる…」と陸は言った。

「会えますよ。いつでも。俺、陸さんからお呼びかかればどこでもすっ飛んでいきますから」と栄介は力を込めて言った。

「ありがとう。そろそろつくかな?」と陸が言って、栄介が顔をあげると、まさに店の前だった。

「えっ、あっ、場所わからないって言ってませんでしたか?」と栄介が言うと、

「うん。ちょっとからかったの。栄介の反応可愛いから、実はここは彩さんとよく来る。彩さんは甘いもの好きだから…よくあーんとかしてくれて食べてた♪さ、中入ろ」と陸は言ってなかに入った。

二人はカウンターの端の席に並んで座った。

「あら、陸さん、いらっしゃい」と声をかけてくれる店員に、ポカーンとしている栄介。

「その子は…栄介さんかな?彩さんが最近ハマってる…」と店員が言えば、「そうです。俺も栄介にハマってるんです」と陸は笑った。

「仲いいんですね~」と店員が言うと、

「そうなんです。いっときは、彩さんをかけて喧嘩もしたくらい…」と陸が言うと、栄介はうつむいた。

「あら、そうなの?って、陸さんの恋人でしたよね?彩さん。何にするか、決まったら声かけてね」と店員は言って去っていった。

それから数分、栄介は悩み、「陸さんは何にしますか?」と言った。

「俺ねえ、紅茶とフルーツタルトにするよ。栄介は?」と陸が言うと、

「俺は抹茶ショコラとコーヒーにします」と栄介は言った。

そして、二人は注文した。

しばらくすると、二人の前に飲み物とケーキが運ばれて来て、二人は、「いただきます」と声を揃えて、ケーキを一口食べた。

「う~ん。幸せ。やっぱり、ここのケーキが一番美味しい」と栄介は心から嬉しそうに言った。

そんな栄介をニコニコしながら見ていた陸だが、

「なるほどね。そんな顔するんだ。彩さん的には嬉しいだろうね。そんな顔して食べてくれたら…連れてきて良かったって…」と陸は少し切なげにぼやいた。

栄介は全く聞いておらず、ケーキを頬張っていた。

「陸さん、食べないんですか!?せっかく頼んだのに、もったいないですよ?」と栄介は言った。

「食べていいよ?栄介。俺、いつも飲み物だけだし…」と陸が言うと、

「ほんと?もったいないね。一口も食べないんですか?」と栄介が聞けば、「一口食べるよ。だから後食べて」と陸は言った。

栄介は飛び切りの笑顔で、「やったあ。ありがとうございます!!いただきます!!」と言った。

陸はそれを見て笑いながら、フルーツタルトを一口食べると、皿ごと栄介に渡した。

それを見ていた店員さんも微笑ましそうに2人を見守っていた。

「ありがとうございます!!いっただきまーす」と栄介は言って思いきり頬張った。

「うんまぁ。これもめっちゃ旨い♪」と栄介は言った。

そこに店員が来て、「いつもほんとに美味しそうに食べてくれてありがとう」と言った。

「だってめっちゃ旨いですもん」と栄介は返した。

「今日は彩さんとじゃないからおとなしいね?陸さん」と店員に言われ、「そうですかね?」と陸は返していた。

栄介はいつの間にか、完食し、コーヒーをすすっていた。
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