ボクサーな彼女
「もう、食べたのか?」と陸が言えば、

「うん、めっちゃ美味しかった」と栄介は笑った。

「そうか。なら良かった。なぁ、これからの部活について話をしよう!!」と陸は言い出した。

「スタイルについてですか?」と栄介が聞けば、「うん」と陸は言った。

「心配なことは栄介もアイツもタイプは似てて厳しいと思うんだよね。彩さんの言うみたいに、厳しいからこそ、甘さが必要だって言うのは俺がよくわかってる。彩さんに厳しく育てられて、栄介の指導は厳しかった。その分俺は周りを甘やかした。そうはすればついてくるって。けど、俺は吐くまで自分を追い込めとは言わない。自分のスタイルで一歩ずつで構わないと思ってる。けど、こんなこと言ってる俺は甘いんだよね。多分…」と陸が言うと、

「確かにそうですね。けど、陸さんはそれを承知で他の誰でもなく、彼を副キャプテンに指名したんですよね?」と栄介が言うと、

「アイツの実力はほんまもん。俺らとはケタが違う。だからこそ、栄介にアイツを支えて、成長させてやってほしい。アイツは今まで周りからちやほやされてきた。だからそれをされないと機嫌悪くなるかもしれない。それでもアイツがみんなのことを想えるように、そうなる日を俺は信じてる。もちろん栄介のことも信じてるよ。だから無理はせず、何かあったらいつでも俺に連絡しておいで。その時は一緒に対策考える」と陸は言った。

「ありがとうございます!!ほんとに陸さんは優しいですね。俺みたいなやつにも」と栄介が言うと、

「当たり前だろ!!大事な後輩だし、彩さんが最も大切にしてる人なんだから。もっと頼って良いからね!!俺にも、彩さんにも」と陸が言うと、栄介は大きく頷いて、残っていたコーヒーを飲み干した。

「そろそろ出ようか」と陸は言って席を立った。

後に続くように栄介も立ち上がった。

会計はまた陸が出してくれた。栄介は申し訳なくも思いながら、また陸の好意を受け取った。そして二人は店を出た。
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