ボクサーな彼女
数日後ー陸は無事卒業式を迎えた。
栄介は泣いていた。「何でお前が泣くんだよ」と陸が言えば、「だってぇ…、寂しいし…」と泣きながら言う栄介の頭を優しく撫でた陸は、「そうか。俺だって寂しいよ。けど、俺の新たな始まりを笑顔で応援してよ」と言った。それを聞いた栄介は、笑顔を作って「おめでとうございます」と言った。そこに「仲良しね~ほんとに。羨ましいわ。陸、卒業おめでとう!!」と彩が言って現れた。「彩さん!!」と陸は言って彩に抱きついた。「お互いに忙しくなるわね。陸とも離れちゃうし…」と彩が言うと、「だね。けど、落ち着いたら俺、彩さんと一緒に過ごしますから」と陸は言った。「あら?どーゆう意味かしら?1年やそこらじゃ落ち着かないわよ?」と彩は言った。「ここで言わせる気ですか?今はまだ言いませんよ」と陸が言うと、「あーあ、彩さん可愛そう。俺がもらってもいい?」と栄介はその気がないのにわざと言うと、「ダメ!!やらないよ!!彩さんは俺のもの…」と陸は言った。「ちぇっ、いけると思ったのに…」と栄介が言うと、「甘いな。俺をなめんな!!」と陸は言った。そこに理亜が来て、「卒業おめでとう」と言った。「兄貴、わざわざそれいいに来たの?」と陸が言えば、「まあ、そんなところだ。と言いたいところだが、さっさとうち来いよな。こんなところで油売ってないで!!お前いないと練習にならんし、オーナーに怒られるから…ほら、行くぞ」と理亜は言うと、強引に陸を連れていった。陸の所属ジムは坂野ジムは大手のジムで理亜と同じジムだった。彩の所属ジム、梨田ジムは小さな個人ジムで、陸を引っ張りたかったのだか、圧力をかけられて、陸を取れなかった。そのために、彩と陸は別々のジムでプレイすることになった。その日から陸は苦しめられることになった。日々の練習は今以上に厳しくなり、先輩達からいじめられ、正直、陸にとっては辛い時間でしかなかった。負ければ、説教とハードな練習が待ち構えていて、精神的に陸は疲れて、覇気がなくなり、彩とはほとんど会わなくなっていた。そんなあるとき、陸は理亜に、「何でこんなところで頑張れるの?」と問えば、「ここは、俺に合ってる。勝ちにしかこだわらないここの考え方、プレイスタイルはまさに、俺の人生そのもの、そして、愛する家族のために俺はここで戦う」と理亜は言った。陸は自分には無理だと感じた。
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