ボクサーな彼女
「そう言えば、こないだ、理亜さんからWデートしないか?って言われたんだけど…どうする?」と彩が言うと、

「いいよ」と陸は言ったので、彩はOKメールを送った。

「兄貴の彼女…ボクシング部のマネージャーなんだって。確か名前は…紀子さん」と陸、

「そう」と彩、

「複雑ですか?」と陸、

「少しね」と彩、

「兄貴のこと、よほど好きなんだね」と陸は言った。

彩はこのとき少しだけ、陸の辛そうな顔を見た気がした。けど、気付かないふりをした。


1週間後ーWデートの日を迎える。

理亜と陸が先に来ていて、その後に、彩、紀子が来た。

「遅くなってごめんなさい」と紀子が謝ると、

3人は口を揃えて、「大丈夫です」と言った。

そうしてWデートはスタートした。

「二人とも、うち、来るんだよね?」と紀子が聞くと、

彩と陸は声を揃えて、もちろんですと言った。

「どこ行くの?」と陸と彩が聞くと、

「考えて無かったけど…どこがいい?」と理亜が聞いて、

「ボーリング」と答えた二人、

「ふざけるな!このバカップル」と理亜が怒るのを楽しそうに見ている紀子。

「理亜さんのバカァ。いつも優しいのに…何で今日そんなに怒るんですか~。私の大好きな理亜さんじゃないんですけど…」と彩が叫ぶように言うと、

「お前なぁ~俺のどこがいいわけ!?」と返してくれる優しい理亜。

「優しくて、いつも大事にしてくれる、それに、相談乗ってくれるし…いつも抱き締めてくれてたじゃん。あれ、凄く嬉しかったんだよ?」と笑う彩に思わずドキドキしちゃう理亜。

「くそ~お前、可愛いなぁ」と言って思わず彩を抱き締めた理亜。

半泣きな陸は「彩さん、俺じゃダメ!?」と上目使いで言った。

「こんなとこで…二人とも…てか、理亜、あなたね~私の前でよくもそんなことが出来るわね!! 羨ましいけど。」紀子は言った。

「ワリィ。どこ行くかだよな~?」と話をそらしながら理亜は彩から離れた。

「映画は?」と言う陸に、

「私、水族館がいい」と言う彩、

彩に激甘な理亜は「じゃあ水族館ね」と言った。

「やったぁ~。陸行こー」と行って嬉しそうに笑いながら陸の手を引っ張った彩。

理亜と紀子はその後ろをただついていくだけだった。

そして水族館を思いきり堪能した四人はカフェに入った。

「陸くん少し二人で話さない?」と紀子が言って二人は席を外した。

取り残された理亜と彩は長い沈黙をした。

耐えきれず、口を開く理亜。

「なんか、今までと違うよな。普通にしゃべれないというか…」と。

「ですね。私、本とに理亜さんばっかで、二人でよく過ごしたりしてたのにね。改めてこうして向かい合って座ると緊張するね」と彩は言って少しうつむいた。

「あいつら、どんな話してんだろな~」という理亜にたいして、

「良いじゃない。そんなこと…それより、理亜さん、最近私に冷たいよね?前は凄く優しくて、いっつもそばにいてくれたし支えてくれたのに」と彩は言った。

「そんなことないよ?大事にしてるよ?」と理亜が笑った。けど、どこか寂しそうな笑いに少し切なくなる彩だった。

「練習大変なの?やっぱり忙しいんだ…」と彩は呟くように言った。

「ああ、ゴメンな」と理亜は言ってテーブル越しに彩を抱き締めた。

そこに、笑顔の陸と紀子が帰ってきた。

「兄貴、何やってんの?」と怖い笑みを浮かべて聞いてくる陸に、

「陸お帰り、紀子さんも」と彩は言った。

「ワリィ。つい。彩が可愛くて…。」という理亜にため息をつきながら、

「兄貴には叶わないな。けど、彩さんは俺のだよ?」と陸は言って席につくと、彩と理亜を引き離した。

そんな様子を微笑ましそうに見つめた紀子は、

「良いなぁ~。二人とも。こんなにも愛されて…羨ましい」といった。

「そうだ、みんな揃ってるし…ずっと気になってたこと、聞いていいか?」と理亜が言うと、

「誰に、何を?」と紀子が言った。

「彩に…」と理亜が言って、

「私ですか?どうぞ」と彩は言った。

「彩さぁ、俺に一目惚れして、ボクシング部入ったんだよな?なのに、何で俺じゃなくて陸を選んだわけ?俺に対する嫌がらせか?」と理亜は真顔で言った。

「俺もそれ気になる!!」と陸が言った。

「確かに、きっかけは理亜さんだったよ。かっこよくて…
けどね、いざボクシング始めると、毎日必死でボクシング楽しくて…
理亜さんは私にとって、憧れの先輩になってたんだよね。
毎日甘えたりして、たくさん励ましてもらったり、支えてもらったり…気づいたら、恋愛感情の好きではなくて、憧れの先輩として好きだったって気づいたんだよね。
陸を選んだのはね、陸は私のことを好きだってずっと言ってくれてたよね、半分推しに負けた様なところあるけどね。
私が理亜さんのことを好きだと思って、卒業するまでずっと我慢してくれてたんでしょ?
それが凄く嬉しかったんだよ。
それにいつも楽しそうで優しい陸見てると、私まで楽しくなって、いい刺激を受けて頑張れた。
だからね、ずっと私の横で楽しそうに笑ってボクシングしててほしかったんだ。
私にとって、理亜さんは大切な憧れの先輩だけど、陸は私の大切な、たった一人の恋人なんだ…。 答えになってないかな?」と彩は言った。

「ありがと。彩さん。俺、やっぱり彩さん大好きだなぁ~」と笑う陸、

腕を組みながらなにか、考えているような理亜。

そして、しばらくして、「そうか。複雑というか…聞いといてなんやけど、俺メッチャショックやわ。けど、それで納得して陸を選んだなら許す。まぁ、俺にとっても彩は妹みたいな可愛い存在やけどな」と言った。

彩は素直にありがとうと微笑んだ。そして、

「ねぇ、陸、紀子さんとどんな話したの?」と優しく聞いた。

陸と紀子は顔を見合わせてお互いに笑った。

そして、「聞きたい?」と言った。

彩が答える前に、理亜が、「当たり前だろ!!」と答えた。

「どーしよーかなー。紀子さん、話しちゃっても良いですか?」と陸は言った。

「まぁ、そうだよね。うん、いいよ」と紀子は言った。

「あのね、理亜について色々教えてもらったの。ああ見えて、独占欲強くて…とか…。
後は私がマネージャーになった理由とか…
後は理亜と、彩さんの関係とかね」と紀子が、言ってくれて、

そうかと理亜は納得した。

そんな有意義なデートを過ごした四人は家に帰った。

お互いに知らなかったことを聞けた幸せな時間だった。
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