それでもあなたと結婚したいです。
18 移ろう心
赤提灯がいい味出している屋台のおでん屋。
男女二人のカップルがおでんをつまみに日本酒を煽っていた。
「大将~!!冷やおかわり!」
「俺も俺も!!水川~~!!今日は飲んじゃうよ~!吐いちゃうよ~!」
「あははっ!勿体ないから吐くな!!バーカ!!」
「あははははははっ………。なんか寂しい、虚しくなってきたぁ~~。ねぇ藤森~~なんとかしろ~!」
私は飲んでると急に虚しさに襲われることがある。そんな時は忘れるくらい、もっともっと飲みまくるしかない。それで、気兼ねなく一緒に飲んでくれる相手が居れば最高だ。
「うるせー!黙って飲め!俺だって寂しいんだよ!」
「なに言ってんの?あんたモデル級の彼女いたじゃん!」
「別れた……。」
「はぁ?……一応聞くけど、なんで?」
「あぁ~~………本当にバカだよ。美人の彼女振っちゃうなんて……。」
「はぁ?振ったの?マジで?バカじゃん!!あはははっ!!ウケる~~!!人の不幸は蜜の味って言うけど本当愉快だわ!」
「………………………………。」
「ねぇ……あんたさ…やめなよ。」
「人の事言えた義理かよ。」
「ははっ確かにそうだわ。………でも、私はいーけど、あんたには似合わないよ。」
「なぁ、水川~~……。お前が、既婚者と付き合うのって何か切っ掛けがあったわけ?………だっておかしいだろ?わざと最初から本気にならないように人を選んでるみたいだ。」
藤森は、よく周りを見ている。
人間観察が上手い。
知らず知らずに私もその対象として観られていたのか。
自分でも気づかない何かを言い当てられそうで急に怖くなった。
「別に……ただ好きになった人が既婚者だっただけ……。あんたが思ってるほど取っ替え引っ替えじゃないから安心して。」