それでもあなたと結婚したいです。
「取り合えずこっち……」
私の手首を引っ張りながら、藤森はキラキラ光る夜のパークの中へ私を誘い込んだ。
「藤森……ちょっと……」
訳が分からないが、何かいつもの彼とは違う事だけは分かって、その手を振りほどけずにいた。
暫くすると、ライトアップされたお城の前に行き着いた。
「花枝。お前に話がある。」
「いいけど本当にどうしたの?何かいつもと違うよ?日曜は接待ゴルフじゃなかったっけ?……もしかして何か仕事でミスったの?…………」
仕事帰りのスーツ姿の藤森は、走って来たのか肌寒いのに、前髪が少し汗で張り付いていた。
片手で苦しそうにネクタイを緩める仕草は営業のF4の一角とゆうだけあって、様になっている。
独身の女子社員なら目を輝かせる光景だろう。
「違う………。」
「んじゃ、何で?悪いけど私、急いでて、早く千春さんの所に戻らなきゃ……」
「お前が好きだ。」
ドクンッ…心臓が一つ、大きく脈打った。
「何、冗談言ってんの………私、結婚してんだよ。」
藤森がふざけて無いことは分かっていた。
だって、こんな真剣な瞳、見たことなかったから。
「私、………帰る。」
なんて言い返せばいいのか分からない。
ただ早くこの場から逃げたかった。