それでもあなたと結婚したいです。
「……!泉CEO!聞いてますか?」
「ん?………あぁ、……聞いてない……。」
「はっ?」
いつもは表情一つ崩さない佐伯が驚いていつもより目を見開いている。
意外に面白い。
「ふふっ。」
「何が可笑しいんですか?仕事してください!!」
「すまない……フフフッ……。」
自分の不甲斐なさに笑けてくる。
もう、笑うしかない。
「奥様と何かあったんですか?」
「えっ?!」
「今までどんな事があっても、仕事に支障をきたした事は無かったので、考えられるのは奥様かと?」
「はぁー…………。彼女に酷いことをしてしまったんだ。」
「そうでしたか。それで、謝っても許してくれないんですか?」
「いや、日曜から会ってない。」
「信じられません!先ずは心から謝って、後は甘いものでも買っていかれたらいいと思いますが?」
「そんな単純な事で解決するのか?」
「男女の仲は複雑な様で、解決は単純な事の様です。単純な事の方が中々出来ないものですよ。」
「恋人もいないお前に言われても、今一、説得力に欠けるな。」
「お言葉ですが専門家の著書を読んでのアドバイスですので悪しからず。」
佐伯にしては信用ならないジャンルの筈だが、何故か今日は頼もしく思える。