それでもあなたと結婚したいです。
「初めまして、泉 花枝です!主人がいつもお世話になっております!」
私は勝者の笑顔をつくって見せた。
(悪いけど、千春さんはもう、私の旦那様なんだから諦めてよね!)
千春さんといえば、狙われていた事にも気付かず、ニコニコ笑って見ている。
その内、新たな取引先の人が挨拶に来た。
「千春さん!」
千春さんに耳打ちしようとした瞬間、金子秘書が声を挙げた。
「泉CEO。natural farmの森永社長がいらっしゃいました。」
(えっ!)
千春さんも驚いていたが、既に先方がすぐ近くまで来ていたので切り替えて、森永社長に挨拶をし始めた。
近くで黙って聞くしかない私の元へ、金子秘書は近寄ってくると耳打ちした。
「私は完璧に頭に入ってますので、奥様は帰って頂いて結構ですよ。………私の方が泉CEOに今、必要なので。奥様も秘書をされてるので分かりますよね?」
私は言い返しそうになるのをグッと堪えた。
(確かに、彼女の言っている事は間違ってない。………でも、この言い方!!なんなの?!)
「そうですね。金子秘書にお任せした方が間違いないでしょう。私は下がってますので後は宜しくお願いします。」
イラつきが顔と言葉に出そうになるのを必死に堪え、私は一旦、化粧室へと下がった。
広い化粧室に入り鏡の前に座る。
いつもと違う雰囲気の自分が写った。
「花枝。あんたは良くやったわ。千春さんの為に譲ったのよ。正しい判断だわ。」