それでもあなたと結婚したいです。
鏡の中の自分はそう言いながら、少し、しょんぼりしていた。
(もう少し千春さんの役に立つ秘書やりたかったな………。)
少し、休んでから様子を見ようと会場に戻って見ると千春さんの周りは、更に人だかりになっていた。
金子秘書も終止笑顔で千春さんに寄り添っている。
私がいない事にも気づいていないのかと思うと無性に腹が立ってきて、近くにあったカクテルをぐいっと飲み干した。
(少しくらい私を捜してくれたっていいじゃない!)
やることのない私は、無心に料理に集中した。
高級ホテルだけあって、料理はどれを食べても美味しい。
一口サイズで食べやすく作ってあるのでついつい食べ過ぎてしまう。
(ヤバイ…このドレスタイトだから、食べ過ぎると目立っちゃうじゃん!さすがに、ここに居るのは恥ずかしい。)
キョロキョロ会場内を見回してると、開放されているバルコニーが目に留まった。
(あそこなら、人も少ないし、暫く隠れられる。)
お腹を手で隠しながら移動すると、案の定バルコニーは人気がなかった。
「はぁ~……食べた食べた!!しかも、ちょっと酔っ払っちゃった………。」
バルコニーの手摺に寄り掛かりながら空を見上げると、綺麗な月が出ていた。
「月が出てると、こんなに明るいんだ………綺麗。」
(こんな風に月を眺めたのあの日以来だなぁ………千春さんとお見合いした日………あの日は私がやらかしちゃった日で、すっかり千春さんを忘れて帰ろうとしてたんだっけ………)
「フフフッ………あれはないわ。フフッ。」
「何、月見て笑ってんの?変なやつ。」